1 of 2

チクサン出版社 CAP 7月号に掲載された文章を抜粋したものとなります。


West Los Angels Animal Hospital(VCAの最初の病院)
前で獣医師たちと

 

 

 動物病院の業界が、ペットブームといわれる世の中の変化が追い風となって順調に発展してきた中で、業界に長期安定雇用の職場がないということは大きな課題であると思います。
 私は、ここ10年にわたって開業セミナーを行ってきて、これまで1,500人以上の獣医師の方に参加していただきました。現在は、獣医科大学の卒業生の男女比率が逆転して女性の獣医師が多くなっているにもかかわらず、開業セミナーの参加者の男女比率は10年前も今も、男性8対女性2で大きな変化がありません。しかも参加者の女性の半分は、男性獣医師と結婚して開業予定というのが実情です。木稿では、業界に長期安定雇用の職場が必要であるという認識において、そのための課題を考えていきたいと思います。

 

アメリカにおける企業病院の増加
 アメリカの獣医臨床雑誌(PULSE)2004年7月号によると、アメリカを代表する2つの企業病院である、VCA(Veterinary Center Of America)とBanfield の2社だけで、病院数は700w超え、そこには約1,600人の獣医師が勤務しており、診療しているペットの数は毎年600万匹以上であるとのことです。さらに、この2つの企業病院は次の点で共通しています。つまり、病院の経営においてビジネスとしての面と医療としての面を切り離し、獣医師がペットの診察だけに専念できるように力を注いでいることです。
 しかし、両者の病院を増やす方法が全く異なっているのが興味深い点です。すなわち、VCAは、既存の比較的規模の大きい動物病院を買収する方法をとっているのに対して、Banfieldは新しい病院をゼロから開業する方法をとっています。
 この記事の中で、VCAの創業者のBob Antinが、次のような面白いことを言っています。「私たちは、ヒトのヘルスケアの分野で働いていましたので、ヒトのヘルスケアと動物医療の分野には多くの類似点があるとの信念をもって動物医療の分野に参入してきました。しかし、私たちが間違っていたことに気づきました。動物病院で働く人の意欲をかきたてるのは、金銭による報酬ではなく、医療の質、友愛、優れた設備であることが分かったのです。」
 VCAは、動物病院を獣医師とスタッフを移動させずにそのまま買い取ります。ですから、獣医師は今までどおりに自分の顧客のペットを診断して、運営管理やビジネス上の雑務はほとんどVCAの病院の、外部スタッフが処理してくれます。

個人病院と企業病院の違い
 アメリカの企業病院を訪問したときに、病院売却後もそのまま院長として残っている人に買収される前と買収された後とどう変わったかを聞いたところ、「飼い主からみたら、何も変わっていない」、とどの院長も口をそろえて答えてくれました。毎日の診療以外の業務を会社の外部スタッフがやってくれるようになったことが大きな違いだということです。(下表)

企業病院の外部スタッフの仕事の例
・会計、決算、税務申告
・給与計算
・苦情処理
・広告、宣伝
・ホームページ作成
・ニュースレター
・メールマガジン
・院内、院外セミナー企画
・医療機器の導入
・薬剤、医療消耗品の購入
・訴訟の時の弁護、示談
・人材の募集、採用業務

 

 

アメリカでは、若い獣医師が開業を選ばずに勤務医を選ぶケースが増えているといいます。その最大の理由は、時間のゆとりが持てるということが大きいようです。今の若い獣医師は親が離婚したというケースが多いために、お金よりも家族との時間に重さをおく傾向があり、このことが勤務医増加の大きな理由になっています。
 アメリカの開業医と勤務を比較すると、下表のような違いがあります。

開業医と勤務医の長所と短所 開業医 勤務医
自分の思う形の病院、診療
高い収入の期待
地域社会、業界での地位
診療意外の仕事の多さ
×
働く時間の長さ
×
借金のリスク
×
収入の不安定のリスク
×

アメリカと日本の動物病院の最大の違いは、アメリカの勤務医の給与水準が日本に比べて高いということです。
 アメリカで勤務獣医師として活躍しておられる西山ゆう子氏によると、アメリカの臨床医師の年収は下表のようになります。(ただしロサンゼルスは全米でも給与水準が高い地域です。)

全米獣医師の平均収入 103,106ドル(J_AVMA VOL.228,2005)
ロサンゼルスの勤務医の平均給与(年収) 新卒 55,00 〜50,000ドル
中堅 60,000〜90,000
ベテラン 90,000〜120,000ドル以上

 

アメリカで勤務獣医師の年収水準が高くなったのは、VCAやBanfieldのような企業病院が増えたことも大きく寄与しているといわれます。下図。なぜなら、企業病院が獣医師を診療に専念させるという理念のもとに組織化を図ってきたために、高度に分業化、専業化された診療システムが実現し、結果として飼い主が以前よりも高額な新良品を支払うようになっているという傾向があるからです。

VCA 人材募集パンフレット

 

1 of 2

 

 

経営理念 病院案内 勉強会 募集フォーム 会社案内
Q&A