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 今まで、日本の動物病院に長期安定雇用の職場ができなかった最大の理由は何でしょうか。私は動物病院の組織化ができなかったことが最大の原因と考えています。つまり、組織がないところに長期的安定雇用はないというのが、世の中を見渡したときの厳しい現実です。
 それでは、どの程度の規模の組織が必要でしょうか。これについては、明確な答えは難しいと思いますが、せめて50人以上の組織が必要でしょう。
 それでは、動物病院で50人以上の組織をつくるためにはどうすればよいでしょうか。病院の数を増やすしかない、というのが私の意見です。
 今まで、私は、地域で比較的大きな規模の動物病院を経営されている院長に「どうして分院を作らないのですか」とたびたび質問してきました。この質問に対して、ほとんどの病院の答えは、「分院をつくると目が届かなくなるために、医療の質が下がる」というものでした。私は、そのときに、「それでは、医療の質が下がらないように、しっかりした分院長を育てたらどうですか」と質問しました。そうすると「そこまでして育てても、どうせ開業してしまうから」との返答が帰ってきました。最後に、「どうすれば開業せずに勤務医として残るようになると思いますか」と質問しますと「給与を上げることだと思うが、私のところでは無理だね」との返答でした。
 ここに、動物病院に長期安定雇用の職場をつくる重要なヒントがあると思います。つまり、病院の数を増やし、しっかりした分院長を育成し、その分院長が勤務し続けるために、収入、勤務時間などの労働条件をよくするということです。そこで、長期に勤務し続けられるための条件整備ができるかどうか、つきつめれば、動物病院の経営者に長期安定雇用をつくることへの強い意志があるかどうかが、今後業界に長期安定雇用ができるかどうかを決めると思います。

 

前項で、長期安定雇用の条件は組織化だと述べましたが、逆にいうと組織で働けなければ、勤務医として長く働けないということもできます。そこで重要なのが、谷とうまくやってくこと、人間関係能力を持つことです。組織人として求められる人間関係能力とは、、好感を持たれる人柄、思いやり、謙虚さ、相手の気持ちがわかるセンス、忍耐力、素直さ、コミュニケーション能力、人の嫌がることを進んで行える能力などです。
 獣医師は、学生時代から高い偏差値集団の中で育つ、いわゆるエリート教育が災いして他人との協調性、社会性について訓練を受ける場面が少ないために、組織が中で長く働くためにはその自覚をもって努力することが必要かもしれません。
 さらに、組織が成果を出すためには、どうしても優秀な管理職が必要です。
 


管理職の役割

 動物病院の管理職は図にあるように、上下左右への働きかけをしなければなりません。最初のうちは、日々の診療のみをすればよいという段階から、管理職ともなると、トップに対する提言、部下に対する指導、他部門(他病院)との調整、社外間系先との交渉など求められる能力はどんどん広がっていきます。さらに、獣医療の現場での専門職としての役割があります。
 小さな病院ですと、一人が全ての診療項目を持つことになりますが、動物病院の組織化が進むと、専門的な診療を行う獣医師の役割が重要になります。日本に専門医制度ができるかどうかは別にして、専門的な診療へのニーズに対応することは業界にとって非常に重要な課題であることは間違いありません。

 

現在、少子化対策のための論議が花盛りですが、これだけ女性獣医師が業界に増えてきたにもからわらず、あいかわらず男性中心の労働環境では問題が多いと思います。動物病院に長期安定雇用の職場をつくるためには、女性獣医師が子育てをしながら臨床を続けられる環境の整備が非常に重要です。
去る5月25日の日経新聞の「少子に挑む」という特集記事の中では、女性が仕事を続ける為の条件として、1.育児休暇取得御に職場に復帰できること、2.子育て期間中に、パート勤務などの十何な勤務形態を選べる事、3,企業の託児サービス支援など、様々な施策が紹介されていました。
女性獣医師が出産後も臨床を続けられる環境整備は非常に遅れているのが現状です。逆にいえば、環境整備が進めば女性獣医師は飛躍的に増加するかもしれません。

 

 

私は、動物病院に勤務医精度(長期安定雇用)がどうしても必要であるとの思いから、2000年2月に株式会社ブイエスシーという会社を設立してその準備をはじめました。最初は、既存病院の分院設立支援のコンサルティングによって組織をつくることにチャレンジしましたが、前述したように、組織づくりに賛同してくれる院長にめぐり合うことができず、この方法は断念しました。さらに、動物病院の給与水準を上げるためには病院のクライアントを効率的に増やす必要があったので、ショッピングセンターに病院をつくる物件開発を手がけるようになりました。
その後、2002年から直営病院の経営をはじめました。これまでのわずか3年間の間に、関東、東海、関西を中心に合計で19件の直営の動物病院を開業することができ、獣医師41名、動物看護士28名の組織になっています。獣医師の構成は、女性24名と男性17名、臨床経験4年以上が30名で、当初予想したとおり、女性獣医師の大半が開業ではなく勤務医の道を希望しています。現在は、特に育児と仕事の両立という重要な課題に取り組んでおり、具体的には、産前産後の休暇手当、育児期間中のパート勤務を実施し、近くのグループ病院の獣医師同士が協力しあっているところです。

 

動物病院が開業医中心に発展してきたことは、これまでの業界成長期にあっては、非常に上手くいっていたと思います。しかし、今後の女性獣医師の増加、動物病院の過密化による開業失敗リスクの高まり、動物医療の専門化を見通した場合に、動物病院の組織化によって長期安定雇用の職場をつくることの必要性は非常に高いといえます。
もしこのまま、日本の動物病院の中に長期安定雇用の組織ができなかったら、開業を希望しない多くの獣医師は不幸にも業界をさらなければならないという事態が続くのではないでしょうか。今後、多くの業界関係者が動物病院における長期安定雇用の創出に取り組まれることを期待します。

 本稿については、是非、多くの方からご意見をいただきたいと願っております。
次のメールアドレスに是非ご連絡下さい。必ずお返事致します。

medical@opal.plala.or.jp

 
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