このような業界事情の中で賢明な獣医師の多くは、動物
病院マーケットを拡大することの重要性を十分に理解して
いると思います。つまり、限られたマーケット、既存の患
者のシェアを単純に取り合うというのではなく、日進月歩
で進歩する動物医療の技術を新たなマーケット創出につな
げることが非常に重要であるということです。
具体的な課題として次のようなことがあると思います。
1.勤務医精度が確立した動物病院の増加
動物病院では獣医師不足に陥り、規模拡大を図って動物医
療のクオリティをあげようと思ってもできない状況があり
ます。
筆者は何度もアメリカの動物病院を見学していますが、
アメリカは、動物病院の建物の大きさもさることながら、
獣医師複数体制の動物病院が日本とは比較にならないぐら
い多いのです。
日本は、勤務獣医師の待遇改善に対する努力を怠ってき
たために、勤務獣医師の業界における労働市場が拡大しな
いという結果をもたらし、このことが獣医師複数体制の病
院の数の少なさや勤務獣医師の医療レベルの停滞をもたら
していると思います。つまり、業界における勤務医制度の
確立は動物医療のクオリティの向上にとって、非常に重要
な要因だと筆者は考えています。
2.病院間連携、分業システムの発展
筆者は獣医師ではありませんが、たびたび臨床の勉強会
に参加します。細かいことはもちろんわかりませんが、そ
の中で重要なヒントを得ることが多いです。
たとえば、日々進歩する動物医療の変化のスピードがま
すます速くなっていることを考えると、1人の獣医師がす
べての専門分野の進歩についていくのは現実問題として不
可能だと思います。複数の獣医師が専門分野を分業、役割
分担するしかないのです。ことばを換えていえば動物病院
を個人プレーの運営からチームプレーの運営に変えていく
ことです。チームブレーの発想を持つ院長が増えることと、
動物医療のレベルアップには深い関係があると思います。
さらに、日本に二次医療の動物病院が増えることや、そこ
までいかなくても、病院間でそれぞれ得意分野を持った病
院が役割分担を図り、患者を紹介し合う、いわゆる動物病
院間連携は必要だと考えます。
3.
診断能力向上は動物病院マーケットを広げる
筆者が、アメリカ最大の動物検査センターであるVCA
アンテックのクラッセン所長から聞いた、忘れられない言
葉があります。それは、「検査売上を上げることは、その
病院の医療レベルを上げることと密接な関係がある」とい
うことです。これはもちろん、動物を検査漬けにするとい
うこととは全く意味が違います。動物病院には動物の病気
を治したり、予防することとともに、飼い主に情報を提供
するという重要な役割があるということなのです。仮にそ
れが治らない病気であっても、愛する動物の病気について
の詳しい情報、最新の情報がほしいというのは、飼い主の
自然な気持ちです。
一方で、検査や診断のために飼い主にコストを負担しても
らうことも重要なテーマなので、いかに飼い主を指導するか、
いわゆるクライアントエデュケーションが重要になってくる
ということは多くの獣医師にとって周知の事実でしょう。