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小久保 貴史獣医師
 アテナ動物病院 日の出院長

 

 

「企業病院におけるEBMに基づく治療方針の意義」

企業病院ならではのメリットは今までの各院長先生方が様々な実体験からの紹介をしておられます。

私は今、院長職とは別に診療部という部署で治療方針や薬剤の統一やメーカーとの交渉等の仕事を行なっております。

そこで私からは、今取り組んでいる治療方針や薬剤の統一の事について、「なぜそれが必要なのか?」と言うお話をさせて頂きます。

最初に、皆さんは飼い主の方にとっての企業病院に期待している、望んでいる事は何だと思われますか?

その大きな1つが、どこの病院でも同じレベルの治療を受けられる事です。

引越しをしても新たに病院を探さず、近くの同じグループ病院にいけば今までと同じ治療が受けられる。

遠くの友人に「良い病院はないか?」と聞かれた時に自信を持って自分の行っている病院の友人の住む地域に一番近いグループ病院を教えてあげられる。

それがどれだけの安心と信頼に繋がる事でしょうか。

しかし、統一とは言っても、今までの経験やカンあるいは「@@先生が言ってた。」と言うレベルでの統一では場合によっては大間違いな内容での統一になってしう恐れがあります。統一をするにも一定の基準が必要です。

その基準がEBM(evidence-based-medicine)です。

EBMとは根拠に基づいた医療の事を指します。根拠とは多くの場合、論文なり成書を指します。もし1つの根拠に相反する記述がある場合には、それらの論文数の比較や書いている人の経歴や大学、発表時期等を考慮にいれて合理的な判断をしていきます。

中には「そこに書いてなくても経験上成功した。数字が全てじゃない!現場ならではの部分もある。」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし1、2例の例外と、数々の数的な実績の積み重ねの元のデータとがあったらどうでしょうか?物事何事もそうですが、1%のAと99%のBとあった場合、多くの方はBを選択されるのではないでしょうか?

そもそも私達獣医師は科学者でもあります。科学とは根拠により事の是非を問う分野です。「1+1=【およそ2】」であってはならない分野です。

かく言う私も昔は「数字で全てがわかるわけじゃない」という考えでした。しかし、いくつもの論文や成書を読み深めていくうちに、また、様々な体験をしていくうちに、残酷なまでに数字(統計)の絶対さに愕然となりました。

今でも深く胸に残る、私の薬学の師匠からの言葉があります。

「小久保先生、薬と言うのは非常に正直だよ。ある症状に対して薬が効果がない時、その理由は非常にシンプルだ、選択が間違っているんだよ。そこには経験やカンは無力だ。効くか効かないか、それだけなんだよ。」

何より、私達が診ている仔達は飼い主の方にとって大切なご家族です。実験動物ではないのですから、多くの実績があり効果がある方法や安全な選択が存在しているのであれば、その方法を採用するのは当然の事ではないでしょうか?そうして行くと治療方針や選択薬と言うのは自ずと決まって来るのではないでしょうか?

最後に、長々と取り留めのない話をしてきましたが、読まれた方々の中には「データに沿った統一治療や薬剤選択なんてのは【機械】と同じだ!」と言う声もあるかと思います。

誤解をしないで頂きたいのは、EBMと言うのは良い臨床研究を見つけて医療をマニュアル化する事だけではありません。

EBMにおいて最も重要であり、かつ労力を要するのは説明と今後の治療の選択の部分です。

目の前の患者を幸せにできるかどうかは、有効な方法やデータを下に、飼い主の方との対話を行い、いかに適切な状況判断ができるかにかかってきます。

こうした【人】として【治療者】としての高度な経験と技術、いわゆる【ヒューマンスキル】があって始めてEBMに基づく医療サービスができるのだと思います。

データはあくまでも道具です。その道具をいかに有効に使いこなすか、それが重要なのだと思います。

一流の料理人は家庭の冷蔵庫の食材や普通に家庭においてある包丁等でも見事な料理をつくります。もし、その一流の料理人が最高の食材と道具をつかって料理を作ればどうなるでしょうか?それは極上の一品になるのではないでしょうか?

 

 

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